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「越境」するライトノベル:序章

序章:ライトノベルブーム? ライトノベル批評本ブーム?

 本当は ライトノベルファンパーティのコラムに書こうと思っていたネタなのだけど、余りにもネタが拡散してしまって、どうにもこうにも纏まりそうにないので、自分のblogで不定期連載してしまう事にした。何かというと、ライトノベル担当の書店員としてここ数年肌で感じている変化を、リアルタイムである今こそ文章という形で明確にアウトプットしておきたいという欲求である。
 ひょっとしたらこれが一つの史料になるかもしれない、という思惑もある。史学科出身なものでそんな大層なことまで考えているのである。ごめん、偉そうだった。そんな偉い事を書く訳じゃない。

 ここ数年、ライトノベルという言葉を良く聞くようになった。ラノべとは縁の無さそうな出版社の営業の人も口にする。「ライトノベルって何ですか?」と難しい事を訊いてくる人もいる。その言葉の定義や善し悪しはさておく。ともあれ「ライトノベル」は業界で確かに流行っている。
 その一方で、あれは「ライトノベルブームではなく、ライトノベル批評本ブームだ」という論がある。私も基本的には賛成だ。

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 振り返ってみたらこんなにある。一年強で七冊だ。二ヶ月足らずに一冊…いや最初のラッシュ時の間隔はもっと短い。他にも雑誌の特集などそれこそ枚挙に暇が無い。正直市場規模を考えたら、飽和しているとすら思う。
 だがこれはつまる所、いわゆる文壇の異端児だったライトノベルが、無視できない存在となってきた、という話だと思うのだ。
 これらの批評本を、ライトノベルの権威付けだ、と従来のファンには嫌う人も多い。私も「権威」という奴には懐疑的な人間である。だが、この「権威」という奴が便利なツールなのは事実なのだ。小説における権威の代名詞「芥川賞・直木賞」だって、もともとは本をもっと売りたい為に創設された賞である。講談社のメフィスト賞も、最初は森博嗣氏を売り出す為に作られた賞だった。かように賞や権威という奴は、実に販売促進に役立つのである。それで今まで手に取らなかった人が、ラノべを手に取るのなら結構な事だ。
 ライトノベルが批評されることで衰退していくのではないか、かつてのSFと同じ道を歩んでいくのではないか、と心配する向きもいる。だが私はそれを杞憂と断じる。なぜならライトノベルはジャンルではない、ゆえに閉塞はしない。あらゆるジャンルを自由に渡り歩き、貪欲にあらゆる要素を取り込んでいく。たとえ外からの目にさらされ、定義の枠を嵌められようとしても、ライトノベルの渾沌はそんな外圧など跳ね返すだろう。一ライトノベルファンとしてそう信じる。
 むしろこの状況を利用して、ライトノベルは更なる浸蝕を開始しているのだ。
 この「ライトノベルブーム」、あるいは「ライトノベル批評本ブーム」という潮流の中で、何が起こっているのか。
 それはライトノベルの、一般文芸への進出である。ラノべって興味はあるけど、あの表紙はちょっと…という小心な人々の為に、ラノべは一旦その象徴たるイラストを脱いで、密やかに一般文芸の世界に紛れ込み始めたのである。
 私はこの一連の現象を「越境」と名付け観察を続けた。

 このコラムは、その観察結果を元に、独断と偏見で偉そうな事を書こう、という企画である。興味の無い人は「指輪物語」のパイプ草のくだりだと思って、積極的に読み飛ばして欲しい。

 という訳で、次回「第一章:「ライトノベル=文庫」というカタチの終焉」に続く、予定

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コメント (4)

dark:

それは「越境」ではなく「侵食」というのだよ。
(ライトノベルがするにしろ、純文学がされるにしろ)

あのアニメ調・漫画調のイラストが無い本はライトノベルではない。
(理由は単純でライトノベルの中で大多数を占めるから)

あとはマイナー志向。一般文学の中に行きたくない、という流れは必ずある。
何故なら「俺自身がそう思っているから」。
母集団の中に俺のような人間がいる限り、ライトノベルは純文学へは向かわないだろう。

「侵食」というのはおかしいな。
すでに腐り澱んでいるものを汚染はできない。
純文学の闇瞑と停滞は若年層の売上げで読める。

ラノベの売上げが凄まじい理由は単純な需要と供給。
純文学が廃れている一つの原因は、完成度を追い求めすぎるあまり、読者が受け入れにくくなってしまっている。
ラノベは読者のことを考慮して描かれているからこそ、こんなに支持されているんじゃないかと。

どちらかに優劣をつけたり、正当性をもたせるなら。
私は娯楽としての本分をわきまえたラノベに票を入れます。

ゐんど氏、煽りに負けず頑張れ!
応援してるお!

そぷらの:

「純文学」というのももはや死語に近いし、それが娯楽的ではないというのもどうかと思うよ。というか、そういったある種わかりにくい部分に面白さを感じる読者に向けて書かれた小説というのが愛咲さんいうところの「純文学」にあたるのじゃないかな。たぶんそれは、当の昔に解体されているか、また別のジャンルとして再構築されたんだよ、きっと。
いや、私もこの連載は楽しみにしていますので、よろしく。

ゐんど:

>darkさん
個人的に、ライトノベルと一般文芸の関係を敵対的には捉えていないので「越境」という言葉を使いました。確かにイラストの無いラノベは、本質の一部を失っていると思いますが、ここでは広義のラノべとご理解下さい。
ラノべの中にあるマイナー志向というのは納得です。ラノべには主流たる一般文芸に対するカウンターカルチャーという一面もありそうです。ただ、その一般文芸とラノべの間に、今何かが起こっていると感じたので、この連載を始めました。その辺をこれから描いていければ、と思っています。

>愛咲さん、そぷらのさん
応援ありがとうございます。次回がいつになるか分からない不定期連載ですが、長い目で見ていただければ。

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