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自費出版の本が売れる訳ない!

自費出版 ある専門会社の倒産

 ビブロスの倒産は、系列の自費出版会社・碧天舎が足を引っ張った形だった。実は前から自費出版ブームには色々思う所があったので、いい機会だから久々に本屋語りでもしようかと。
 最初にお断りしておくと、このエントリタイトルは暴論に聞こえるかも知れない。だけど私は警告したいのだ。自費出版しようという人がいたら、まずはそのリスクを考えて欲しいと。

 現在ライトノベル等を担当をしている私だが、以前結構長い間「文芸書」を担当していた。大抵の本屋の入り口一等地にある花形だ。しかしその実態は…毎日のようにやってくる新刊をただただ捌いていくハードワークである。大手出版社の有名作家の話題作がどどんと入荷するだけなら楽なんだが、ある意味メインの仕事は、細々とやってくる本たち(それでも合計すれば話題作より圧倒的に多い)の相手だ。聞いた事もない作家の作品群を吟味して仕分けし陳列する、日々その繰返し。
 そんな中、なんか造りの安っぽい本が一冊二冊入ってくる。出版社を見て納得。「ああ、自費出版か」
 そして即返。陳列せずに即座に返品の略である。
 もしタイトルを見て、ひょっとしたら売れるかもと思ったら、一応新刊棚に刺してみる(数も少ないし平積み・面陳は無理)。で、一週間くらいして「案の定売れなかったな」で返品。
 そんなひどい、と金をかけて出版した著者は思うだろう。だがこれが現実だ。書店の棚は有限である。新刊は一日に百種類以上、文芸書はその一部とは言えかなりの数である。陳列するというのは在庫するという事であり、本屋は借金をして店に本を置くのである。ならば売れる可能性の低い本より、少しでも確率の高い本を選ぶだろう。それが商売人として当然の感覚だ。
 自分が読者として本屋に行った時の事を考えて欲しい。聞いた事も無い著者の、良く知らない出版社の、造りの安っぽい本(そのくせ値段は1000円以上しっかりする)を買うだろうか? 本屋には他にもたくさんたーくさん本があるのに?

 メモを手にしたお客さんに問い合わせを受ける。聞いたことないタイトルと著者。出版社を聞いて納得。「ああ、自費出版か」
 在庫が無いと答えると怪訝な顔をされる。「著者に本屋にあるって聞いたんだけど」…知人に買わせようとするのはどうか、と。それだったら同人誌で安く仕上げて、ただで献本した方が友情には有益と思うんだけどなー。
 本屋に流通と聞いて、自費出版の著者は自分の本が村上春樹とかの本の横に平積みされている様を夢想するのかも知れない。でも、ありえないから。全国に無数にある書店に配本してもらって、その上で平積みしてもらうにはどれだけの部数が必要か一度計算してみると良い。結構絶望的な数だから。ああいう出版で万単位の部数、刷れるのかな?

 私個人は書籍流通に自費出版を載せるのに反対である。
 出版社側からすれば現金を手に入れる旨みのある商売なのだろうが、書店の側には労が増えるだけでメリットがない。だって売れないんだから、売上にならないもの。
 何より本屋として心苦しい。総じて自費出版が駄作だと言うつもりは無いが、まず出す事が目的である以上、普通の書籍と比べて平均的なクオリティが下がるのは間違いないだろう。本のプロとして、お客様にハズレの可能性が高いものを売るのは気がとがめる。

 もちろん自費出版の著者は真摯なのだろう。自分の作品が傑作だと信じているに違いない。お金を出してでも世に問いたいという心理なのだと思う。
 でも自信があるなら、普通の出版社に持ち込むべきだ。一社が駄目でも、二社三社、安易に金を出さず、足を棒にして出版社廻りをして欲しい。それでも駄目なら、まず自分の作品を疑ってかかるべきだ。
 もし本当に傑作なら、金など要求せずに、一緒に本を作りましょう!と言ってくれる編集者がいるはずだよ。

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コメント (4)

匿名:

思潮社は自費出版との話ですが、文化財として出版の形態をとっておく、というのがあるようです。

ゐんど:

なるほど、思潮社ですか。確かにあそこの本は、他とはちょっと雰囲気が違って、信念みたいなものが感じられました。…でも、やっぱり売れないので即返でしたけど。

匿名:

詩人の賞、中也賞とか朔太郎賞とかですが、は出版物が前提なんですが、大体思潮社から出てるんです。
自作自演ぽいですけど、国会図書館に残ればいいんでしょうね。

リブロの、ポエム・パロウルとか。

ゐんど:

なるほど、そういう事情もあるのですね。
確かに国会図書館に保存されると言うのは魅力かも知れません。

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