正月休みで更新ネタが無いので、久しぶりに出版業界ネタを。
よく書店員さんのブログで「売れているのに、出版社が重版しない!」という悲鳴めいた言葉が書いてあります。
これを読んで一般読者は疑問に思うんじゃないでしょうか。なんで売れているのに出版社は重版しないの? 出版社はバカなの?
ならば、説明せねばなるまい!
確かに、普通のメーカーなら、商品が売れていて、小売店から注文が来ているなら、じゃんじゃん生産すればいい。しかし出版業界では、物事はそう単純ではありません。
それは本には〈返品〉があるからです。
ある商品がベストセラーになって、注文が来ているから、とガンガン重版、市場に投入したとします。ある時それが突然ぱたりと売れなくなった時(そしてそんな事は良くある)、書店は一斉にその商品を返品します。一店一店は数冊ずつだったとしても、塵もつもればなんとやら、それはとんでもない返品量になるのです。
だから出版社は注文がガンガン来ていても、重版に慎重です。売れていて市場に商品が出回っている程、返品リスクも高まっているからです。だから「売れているのに重版されない」という状況が発生するのです。
これは出版業界の再販価格維持制度(と委託取引)が抱える構造的な問題と言えます。
しかし、だからと言って、私は再販制度を単純に「悪」とは思いません。返品ができるからこそ書店は、書籍のようなアイテム数の膨大な商品群を在庫リスクほぼなしで販売できるのです。絶版や品切もあるとはいえ、十年前の本が普通に買えるのは、商品を書店から別の書店に回転させられるシステムがあるからです(例えば十年前のゲームを買うのって大変ですよね)。これは、どんなシステムにもメリット・デメリットがあるという事に過ぎません。
結局、この「売れているのに重版されない」問題をどうにかするには、書店が「返品しないからこれだけ商品をくれ!」と言える制度を設けるしかないと、私は思います。そうすれば出版社も返品リスクがなく、安心して重版できるはずです。返品不可の商品は、現状でも〈買切〉と呼ばれるものが存在するので、不可能ではないはず……ただ、難点は同じ商品に返品可能の〈委託〉と不可の〈買切〉の二つの条件が発生してしまい、書店にも出版社にも取次(問屋)にも区別がつかない事。
と思っていたら、こんなニュースが。
これが実用化すれば、商品を1冊1冊管理できるので、〈委託〉と〈買切〉が併存させられるかもしれません。
ベストセラーが生まれた時、出版社が安心してどんどん重版でき、書店が欲しい商品をきちんと確保できる、そんな双方が幸せになれる日が来るのかもしれません。




コメント (14)
返品リスクを減らす手としては BOD (Book on demand) なんてのもありますが、今いちマイナーですね。
投稿者: okela | 2008年01月03日 20:00
日時: 2008年01月03日 20:00
これより電子ブックがもっと普及したらいいのにとおもうだんが・・・
だけど紙じゃないと嫌って人もいるしな・・・
投稿者: 匿名 | 2008年01月03日 21:10
日時: 2008年01月03日 21:10
どちらかと言うと、この場合は流通とか製造上の問題(生産に時間かかりすぎ。小ロット生産が出来ない。細かい注文を受け付けない)ですから、残念ながらICタグの導入では解決しないでしょうね。
先にokelaさんが仰ってますけど、BODが現状すぐ思いつく解決策ですけど、いかんせん高コストなのがネックかと。自分としては印刷技術の改善と配送方法の検討で採算を取れるレベルも可能だと見ているんですけど、なかなか誰も挑戦してくれませんね。困った物です。
投稿者: 通りすがり | 2008年01月03日 23:30
日時: 2008年01月03日 23:30
>okelaさん
BODはやはりコスト面が難題ですね。どうしても小ロットだと高価になります。
>匿名さん
電子ブックは、なんというか「手触り」にまだまだ改良の余地があると思います。かくいう私も、当面「紙」派のままっぽいです。
>通りすがりさん
確かにICタグでは抜本的解決にはならないでしょうね。
ただ現状のシステム内でのより良い解にはなれるのではと期待しています。
投稿者: ゐんど | 2008年01月04日 09:56
日時: 2008年01月04日 09:56
こうしてシステムが複雑化していくのだということがよく分かった。
投稿者: 匿名 | 2008年01月04日 12:17
日時: 2008年01月04日 12:17
悩ましい問題ですね。印刷業に籍を置いている者としては…
本来印刷というのが「大量に」原本のコピーを作る技術ですので、
製作段階で小回り利かすのも限界があるんですよね。
経費的にも、一度に作る数か少なければ少ないほど、相対的に高額になる。
オンデマンド的な便利さと、値段がトレードオフなのは仕方ないかと。
投稿者: とくめいきぼう | 2008年01月05日 12:17
日時: 2008年01月05日 12:17
ハリポタは確か買い切りで、しかも予想通りに売れなかったため小売が文句を言っていましたね・・・
リスクをとるのも当たり前だけど大変ですね。
投稿者: peace1941 | 2008年01月06日 10:10
日時: 2008年01月06日 10:10
>匿名さん
確かに「例外」を作れば作るほど煩雑になってしまうのも問題ではあります。
>とくめいきぼうさん
大量に作れば作るほど単価が安くなるのは世の習いですからね。悩ましい。
>peace1941さん
個人的に「ハリポタ」の売り方は嫌いなのですが……
ただ、売れなくて文句を言うのは筋違いだったと思うんですよ。買切りと分かって注文したんだから、そこは責任を持たないと。そんなんだから、書店員はマーケティングができない、とか言われちゃうんです(哀)。
投稿者: ゐんど | 2008年01月06日 13:57
日時: 2008年01月06日 13:57
重版かからないのは、
大手の本屋が大量に在庫を抱え込んでるからだってバイト先の課長が言ってた。
売れなくなったら一気に返品するから重版できないんだってさ。
こうやって小さい本屋は機会損失で潰れていく。
投稿者: nnn | 2008年01月06日 19:10
日時: 2008年01月06日 19:10
でも、明らかに出版社に問題があるケースもありますよね?
ローゼンメイデンのケースとか
投稿者: 匿名 | 2008年01月06日 21:15
日時: 2008年01月06日 21:15
>nnnさん
大型書店は、その分出版社のお得意様でもある訳で…なかなか難しい問題ですね。
>匿名さん
もちろん重版を決めるのは出版社の側なので、機を逸した場合など、まず責められるべきも出版社の側だとは思います。
投稿者: ゐんど | 2008年01月08日 23:08
日時: 2008年01月08日 23:08
>>書店が「返品しないからこれだけ商品をくれ!」と言える制度を設けるしかないと
頼んだときにすぐに必要な分が届くならアリかと思うけど、実際に届くのは早くても3日前後のラグができる。このラグが致命傷になって売り時逃して在庫抱えて破綻・・・なんてケースもあるからそれだけでは難しいと思うよ。
なくなる前に注文出すのが担当者の腕の見せ所ではあるんだけどさ(笑
投稿者: びっぱー | 2008年02月04日 12:20
日時: 2008年02月04日 12:20
確かに流通の速度は問題ですね。これは取次に頑張ってもらうしか…
投稿者: ゐんど | 2008年02月09日 10:24
日時: 2008年02月09日 10:24
ガマ王子とザリガニ魔王がほしい。受注生産にしたらいいと思う。
ネットオークションのやつらがダフ屋まがいの買占めをやってるから品薄で、手に入らない。
投稿者: NEWSすげぇアホ | 2008年10月21日 09:58
日時: 2008年10月21日 09:58